マテリアルサイエンスの魅力とは?実際に専攻している私が解説
投稿:2025/08/06 更新:----/--/--

こんにちは! でるてぃーです。
僕は工学部生なんですが、工学部といっても分野はたくさんあります。機械系、電気系、材料系など……
そこで僕がやっている材料系、すなわち「マテリアルサイエンス」はどんなことを勉強するかをご紹介します。
目次(見出しにジャンプします)
マテリアルサイエンスって?
一言でいうと、モノづくりの中でも原子や分子レベルで物質を研究する分野です。
「材料工学」や「応用化学」、「物質科学」などの専攻名がマテリアルサイエンスに相当します。
工学系の花形といえば、機械系や電気系だと捉えられています。それに比べるとやっぱり地味ですね。
大学受験でも、どちらかというと機械系・電気系のほうがイメージが湧くので、志願者は微妙なところ。
しかし!工学の基礎はまさに
マテリアルサイエンス
です!
結構なことを豪語しましたけど、本当ですよ。
マテリアルサイエンスで扱うのはセラミックス、半導体、レーザー、機能性高分子などなど……すべての工学における上流工程にあります。
つまり、誤解を臆さず言えば、マテリアルサイエンスこそ最も重要な分野だと個人的に思っています。
物理も化学も大事
ミクロ的にいえば、物質の性質を決めているのは「電子」です。
電子の挙動は、電磁気学や現代物理学などの物理で理解することができます。
それと共に、有機材料や無機材料の性質を、熱やエネルギー的に評価する化学的な知識も重要です。
つまり、物理と化学、両方のプロでなければいけないということですね。(僕化学苦手ですけど)
就職にめっぽう強い分野
あらゆる工学の上流工程にある以上、この手の専門職は引く手あまたです。
就職率がほぼ100%なんてことはザラ。医学部の国試合格率みたいな数字ですが、本当です。
大学の科目も、学部レベルであっても知っていると即戦力になれるものも多いです。
詳しいことは抜きにして、「マテリアルサイエンス」はどんな材料を扱っているのかを具体的に見ていきましょうか。
研究対象となるデバイスや材料はいくらでもあるんですが、今回は4つに絞りました。
セラミックスとは

端的に言えば、無機材料です。
ふつう、陶磁器のイメージがありますよね。ワレモノ注意って感じ。
しかし一般には、無機物を焼いて固めたものという意味です。
真空技術や電気炉など、いろんな実験器具やセラミックスの製造方法があって、特に物理・化学両方詳しい人が多いですね。
硬くてもろく、熱に強い
割れやすいのは確かですが、それ以上に硬さ・耐熱性に自信のある材料です。
例えば、コンデンサや燃料電池、プリント基板といった電気系のほか、メモリなどの記憶素子、レーザー、ガラス材料、さらには人工骨といった生体材料などに応用されます。
これぞ、上流工程。モノづくりに欠かせない技術と材料が詰まった分野です。
有名な会社
ファインセラミックスで有名な京セラ、自動車排ガスセンサや燃料電池に強い日本ガイシがありますね。
他にも積層セラミックコンデンサで世界トップシェアを誇る村田製作所、高周波回路用素子などが有名な太陽誘電など、あげればキリがありません。
半導体とは

電気が流れる導体と、全く流れない絶縁体という言葉は耳にしたことがあるかもしれません。
導体と絶縁体の中間の性質をもった物質を半導体といいます。
最近、ニュースやCMでも「半導体は大事だ」と言われていますが、本当に大事ですよ。
今、この画面を見ていると思いますが、そのデバイスはPCでしょうか?スマホでしょうか?
いずれにしても、100億個以上の半導体素子が使われています!
100億って、イメージ湧かないですよね。乳酸菌かと思いましたもん最初は。
しかもその100億個、たった1つのCPUにぎっちり詰まっています。集積回路ってやつですね。
こんな技術、どんな職人がやっても手作業でできるわけありません。ミクロを扱う物質科学だからこそできる業。
周りは半導体でいっぱい!
テレビやスマホ、パソコンといったガジェットにはもちろんのこと、基板があるところには全部半導体があります。
トランジスタやダイオードという言葉は聞いたことがあるでしょうか?全部半導体です。
便利な暮らしは、半導体が陰で支えています。それだけ需要がある業界ですし、就職にも強いです。
有名な会社
イメージセンサで有名なソニーグループでしょうか。パワーデバイスのROHMも強いですね。
半導体を作る所では東京エレクトロンだったり、メモリで一線を画すアドバンテストなどなど……いろいろあります。
レーザーとは

「ビーム発射!ビビビビッ」ってイメージでしょうか。間違ってはないんですが、もう少し工学的に踏み込んだ説明をしましょうか。
レーザーって、実は略語なんですよ。英語ではLASERですが
Light
Amplification
by
Stimulated
Emission
of
Radiation
(誘導放出による光の増幅)
という意味です。
誘導放出というのは、原子が放出したエネルギーによって新たな原子がエネルギーを出して……という連鎖的な現象です。
これらの放出された光は、いろんな物理的な量が揃っており、真っすぐで強力なエネルギーを与える光になります。
- 高校物理を知っている人向けに言うと、波長や振動数、位相、偏光状態が揃った光が集まってレーザーになっているということです。
何に使うの?
先生がスクリーンに当てているレーザーポインターなんかいい例ですね。光ファイバーや光ディスクの書き込み・再生にも使われます。
他にも、医療分野でもガン細胞を破壊したり、シミや脱毛といった美容にも。さらに、忘れてはならないのはレーザー加工技術。モノづくりには欠かせない存在です!
具体的にはCO2レーザーや半導体レーザー、YAGレーザーなどがあります。目に見える緑色のレーザーから、目に見えない紫外線・赤外線のものもあります。
有名な会社
医療機器としてもおなじみのオムロンや、光学素子で有名な浜松ホトニクスなど。
光ディスク技術で牽引するパナソニック、産業用レーザーが得意な古河電工などが挙げられますね。
機能性高分子

紹介した中で一番身近に感じるかもしれませんね。主に有機材料です。
ポリエチレンやポリエステルといったプラスチックは、実はたくさんの分子が連なってできています。
ほかにも、発泡スチロールで有名なポリスチレン、塩ビパイプや消しゴムとして有名なポリ塩化ビニルなど。
どれもこれも聞いたことのあるものばかりでしょう?
言われれば「確かに」というものも

ペットボトルはPETと略されますが、ポリエチレンテレフタラートという高分子です。
フライパンで有名なテフロン加工、これはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)です。なんだか呪文みたいですね。
ストッキングに使うナイロン6,6、最近よく聞く有機ELに使うポリフェニレンビニレンなどなど……もういい?はい。
作って楽しい有機材料
有機化学を専門にする人たちは、コストはあんまり考えずにとにかくおもしろいものを作っている印象です。
学生のミスで発生したへんてこな物質が、何十年後にノーベル賞のきっかけになったりと、実験はいろんなことが起こるものです。
有名な会社
導電性高分子などのエレクトロニクス系が持ち味の旭化成、炭素繊維のトップ企業である東レなど、とにかくいろいろあります。
これまでたくさんの企業を挙げてみましたが、どれも就職先としては難しいです。学生時代に頑張って勉強して、自分の強みをアピールできるように準備が必要ですね。僕も頑張ります。
ほかにも太陽電池とか熱電効果デバイスとか語りたいことはいくらでもあるんですが、この辺にしておきましょう。
マテリアルサイエンスを学ぶためのキーワード
いろいろ書いておきます。
基本的な物理数学、電磁気学、統計力学、量子力学、光学、半導体工学、有機化学、無機化学、物理化学、電気化学、固体物理学、電気・電子回路…
どれもこれも物理と化学ばかりですが、理科が好きなら専攻すると面白いかもしれません!
セラミックスや半導体、燃料電池など、ひとつのことを研究しようとしても、上記のような学問を知っておかないといけません。これらは全て、密接に結びついているわけです!
高校理科の延長線上
高校物理では力学・熱・電磁気・波動・前期量子論を扱いますが、全部使いますよ!
高校時代は全て独立に思えたこれらの学問は、「マテリアルサイエンス」の分野では全て繋がっています。
高校化学は理論化学・無機化学・有機化学・高分子化合物といったカテゴリに分かれますね。
とは言いつつ、全部フル活用して勉強したり研究したりします。
全部できなきゃダメ?
そんなことありません。心配しないでください。全部できる人なんていませんから。
「マテリアルサイエンス」に限らず、他の機械系や電気系といった理工学の分野も同じくらい高度なことを扱います。
高校の内容からさらに踏み込んだり、大学じゃ全く違う解釈だったりという発見も好奇心をくすぐります。
マテリアルサイエンスを学べる大学

全部調べようと思ったら多すぎるのでほとんど国公立大学に限定しますけど、結構ありますよ。
ちょっと調べただけでもこんだけありました。
間違ってたらすみません。
・北海道大学工学部 応用理工系学科
・岩手大学理工学部
理工学科材料科学コース
・東北大学工学部 材料科学総合学科
・茨城大学工学部 物質科学工学科
・群馬大学理工学部 物質・環境類応用化学プログラム
・東京大学工学部 マテリアル工学科
・東京科学大学物質理工学院 応用化学系
・電気通信大学情報理工学域 Ⅲ類
・信州大学工学部 物質化学科
・岐阜大学工学部 化学・生命工学科物質化学コース
・静岡大学工学部 電子物質科学科
・名古屋大学工学部 マテリアル工学科
・富山大学工学部
材料デザイン工学科
・金沢大学理工学域 物質化学類
・京都大学工学部
物理工学科/理工化学科
・大阪大学工学部
応用自然科学科/応用理工学科/電子情報工学科
・神戸大学工学部 応用化学科
・岡山大学工学部 化学・生命系応用化学コース
・山口大学工学部
応用化学科
・徳島大学理工学部 応用化学システムコース
・九州大学工学部 材料工学科
・熊本大学工学部 材料・応用化学科
・長崎大学工学部 工学科化学・物質工学コース
・大分大学理工学部 共創理工学科応用化学コース
大学選び中の人向け
いい大学を目指して勉強を頑張っていると思います。それは素晴らしいことです。
ただ、本当に重要なのは大学に入ることではなく
大学で何を勉強するか
です。それを理解している人は、どんな大学・学科に入っても成功します!
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受験にとらわれすぎて、なんで大学で勉強するのかという目的を見いだせないまま大学を卒業する学生がたくさんいます。
高校までは勉強が手段であり目的でした。しかし大学は違います。
勉強は、未来の自分への投資。大学受験の時は漠然としていていいですから、大学に入ったら自分が何をしたいかを考えてみましょう。
まとめ
マテリアルサイエンスの概観をざっくりお伝えしました。
日本の工業を陰で支える肝心要の学問です。理科が好きならきっと面白いですよ!