読み上げ算の魅力
投稿:2023/09/09 更新:2024/09/23
こんにちは! でるてぃーです。
そろばんといえば「願いましては、○×△□円なり~」という言葉が出てくるかと思います。これ、「読み上げ算」という大会の種目なんです。
そんな読み上げ算の魅力をお伝えします。
読み上げ算とは
読み手が数字を読み、選手は読まれた数をそろばんで足したり引いたりしていきます。読み手が読むだけ弾くのを繰り返します。
そして、読み手が言い終わったときの合計を当てる種目、これが読み上げ算です。
……と言われても日本語ではピンとこないので、実際に読み手はどのようにして読んでいるのか聞いてみましょう。
>トップレベルの読み上げ算(出典:こう先生ととしひこ先生のそろばんチャンネル より)
ゆっくりでわかりやすく、練習にもいい音源です。しかし、大会ではもっと早く読まれます。当然、ハイレベルな大会ほど速い。
読み上げ算種目中の会場の雰囲気はとてつもない緊張感です。静寂の中、読み手の声とそろばんを弾く音のみが響きます。
大体のルール・形式
この種目のルールは主に2つです。
①連続正答による形式
②上位先決方式
読み終わった後、選手には解答する時間が与えられ、所定の紙にその答えを書きます。書き直しは認められません。ちなみに、合ってたのに書き間違えたことが何回もあります。
違う問題番号の欄に書くと悲惨なことになります。もともとの問題はもちろん、書き直した欄の問題の解答権も失います。もう思い出したくないこの絶望。
解答時間終了後、解答のある選手は答案を隣の選手と交換・採点するか、全ての問題が終了した後に答案を監督者が回収します。
交換採点の場合、答えがあっていた選手は正答答案を手に持ちながら高く上げます。これは主に入賞枠争いのタイミングで起こります。
全問題が回収された場合、決勝の有無が通達されるか、そのまま表彰式に移るかのどちらかになります。緊張感は半端じゃありません。
連続正答による形式
文字通り、簡単な問題から始めてずーっと正解し続け、正解数の一番多いひとりが優勝のいわばバトルロイヤルです。
規定の問題数を全て正解した人が複数人いる場合は、その選手たちのみで行うサドンデスが始まります。優勝者を決める一問ですから、さらに桁が多く、読むスピードも早くなります。
また、優勝に限らず、正解数が同じ選手たちの中でも入賞枠の都合で決定戦を行うことがあります。やはりサドンデス形式となります。
いろんなドラマがある
これがまた緊張するんですよ。簡単な問題だからこそ「間違えてはいけない」という謎の緊張感があり、ある問題で読み手が変わったり、急に早くなったりするので崩れやすいです。
正解数の都合で決勝を行うときの緊張は、経験していなかったら凄まじいです。相手が決勝経験者だと大体負けます。メンタルの問題ですね。
また、両方正解したり、両方間違えたりするのがずっと続き、閉会までの時間が遅れたりすることもあります。
そろばんの大会は、小学生の部の参加数が圧倒的に多いです。負けて泣いちゃう子もいますね(地区大会に多い)。大会役員が慰めながらその場からはがします。
ハイレベルな大会ではもっとすごいぞ!
地区大会レベルでも相当早いですが、全国レベルの大会になると、一般人にはもはや聞き取れなくなります。
これは全日本珠算選手権大会という全国大会の様子です。世間的なそろばんのイメージを一新する、「魅せる」そろばんを刮目。
>トップレベルの読み上げ算(出典:全国珠算教育連盟 公式youtubeチャンネルより)
……めちゃくちゃ速いですね。トップランカーたちは読み上げられた数をすべて聞き取り、置いてかれないように死に物狂いで弾いています。
上位先決方式
上位を先に決めるということです。最初に最も難しい問題から読んでいき、初の正解者が現れた時点でその選手を優勝とする形式です。
その後、2等、3等……と入賞者を決めていき、最後の枠が埋まった時点で種目を終了します。
この方式は、主に地区大会で多いですね。手っ取り早く入賞者を決めるのに都合がいい形式です。
やっぱりドラマがある
全ての選手は、最初の最も難しい問題から解答する資格があります。
まだ未熟なうちは当然できません。会場の緊迫した雰囲気から、余計な音を立てることも許されない。このじっと待つ時間が嫌でした。でも良い経験ですよ。
種目の進行に伴って正解者はでます。自分ができるレベルをはるかに超える問題をこなせる人がいる。これだけでも新鮮な衝撃です。
優勝者、2等…と入賞枠が埋まり始め、最後の入賞枠を決める問題でも正解できないと、次の問題以降の解答権を失います。もう入賞争いをさせてくれません。
僕も最初は下手くそで、この暇な時間が苦痛でした。プライドを傷つけられたことをよく覚えています。
……なんかひどい種目のように聞こえますが、このシビアさが重要! 勝負ってこういうもんです。
選手はこの悔しさをバネに、入賞を目指したり優勝を狙ったりと、さらなる高みを目指せるのです。
読み上げ暗算
大会で「読み上げ算」や「フラッシュ暗算」と一緒に行われることも多い種目です。
暗算というくらいですから、もちろんそろばんは使いません。読み上げられた数を、頭の中でイメージして計算します。
桁数は「読み上げ算」に比べて少ないですが、ハイレベルだと容赦なく大きい桁が読まれます。
一つ桁が増えるごとに壁がある
頭の中でそろばんをイメージし、それを弾くわけですが、イメージできる桁幅の限界が存在します。
例えば4桁までが限界の選手がいるとして、5桁以上の数が読み上げられる問題ではもう太刀打ちできなくなります。やったとしても、端っこの桁部分が雲がかっておぼつかなくなります。
そして、4桁→5桁、5桁→6桁と頭のそろばんを拡張するのは至難のワザ。はっきり言って先生の指導というよりかは、選手本人のセンスにも左右される種目です。
そのような性格のあるこの「読み上げ暗算」種目では、地区大会や県大会では入賞する選手が大体決まっています。
僕は読み上げ暗算が大キライで(好きな方すみません)、今でも6桁までしかイメージできません。上達の仕方があれば教えてほしいもんだ。
トップレベルの読み上げ暗算
地区大会でも5桁~9桁あるいはそれ以上で優勝が決まったりします。毎回同じようなメンツで。
さらに雲の上、全国レベルの選手にもなれば格が違う。本来「読み上げ算」として行うべき桁数を暗算で行うわけですから。
「7桁~16桁の加減算です」全国大会での読み手はさも当たり前のように読み上げていきます。
まあ実際に見てもらった方が早いでしょう。
>トップレベルの読み上げ暗算のようす(出典:全国珠算教育連盟 公式youtubeチャンネルより)
僕の限界桁幅(頭の中のそろばん)は6桁なので、もはやどうしようもありません。
英語読み上げ算もある
もしも、読み上げられる数が全部英語だとしたら……余計わけがわからない。
でもこの「英語読み上げ算」を種目に含む大会が存在します。
・全国珠算競技大会そろばんクリスマスカップ
・英語読上げ算競技全国大会
などが珠算界で有名な大会の例です。他にもあると思います(英語読み上げ算は管轄外なもんで、調査しておきますね)。
教えるのも相当ムズいはず
通っていた日珠連会員の先生の話ですが、30年前の研修でも指導法は存在していたといいますから、歴史は浅くないようです。これは意外!
英語読み上げ算を教えようと思ったら、先生自体ができるようにならなければ無理な話です。
選手として英語の数を聞き取る能力や、読み手として英語の数を読む能力も必要ですから、指導者として相当の努力を要すると思いますね。
ともすれば、英語読み上げ算の練習をしているそろばん塾というのはかなり貴重な塾でもあります。
実際の読まれ方
>英語読み上げ算(出典:そろばんクリスマスカップ 公式youtubeチャンネルより)
「願いましては」「ご名算」「ご破算」「~なり」「ひいては」「加えて」といった日本語は当たり前のように英語になります。
まず「願いましては」は"Start with"になります。これが演算開始の合図。その後英語で数が読まれます。
例. $2,790,441
百万は"million(ミリオン)"ですから、「2,000,000」は"two million"ですね。
千は"thousand(サウザンド)"です。「790,000」は千が790個ありますから"seven hundred ninety thousand"となります。
以上から、"two million seven hundred ninety thousand four hundred forty-one "と読まれることになります。
……と読み方を書いてはみましたが、大会によってばらつきがあるようです。先ほどのクリスマスカップでは、アメリカの珠算教育連盟が定めた正式なルールに則っています。
TOEICや共通テストも余裕??
勝手な想像ですが、試験では英語の数を(競技なんかよりもゆっくり流暢に)放送するわけですから、みんな嫌いな「数を把握する問題」系を余裕で対応できるかもわかりませんね。
これはすさまじいアドバンテージだと思います。小学生がこれやってたら、その先の英語でもつまずくことが少なくなるでしょう。
(これはこれで英才教育かもしれない)
まとめ
いかがだったでしょうか。読み上げ算は数の格闘技。シビアな勝負の世界にあるからこそ、魅力のあふれる競技です。
僕としては、「魅せる」そろばんとして読み上げ算がどんどん広まればいいなあと思っています。