高校生クイズ2023 大谷対大谷の問題
投稿:2023/09/09 更新:2024/09/24
こんにちは! でるてぃーです。
後から高校生クイズの問題を見ましたが、おもしろい物理問題があったのでやってみました。
問題と条件
もし投手・大谷と打者・大谷が対決し、打者・大谷がホームランを打った時 飛距離は何$m$?
条件
- 投手・大谷翔平の球速は$165[km/h]$で、ボールは地面に水平に飛んでくる
- 打者・大谷翔平が降るバットのスイング速度は$190[km/h]$で、バットは地面に水平に振られるものとする
- ボールがバットに接する時間は$1[ms]$とし、その間に打者・大谷翔平は平均して$6[kN]$の力をボールに加えるものとする
- バットはボールに当たった後、それまでと同じ方向に移動し、バットの水平方向の速度は$166[km/h]$になるとする
- ボールの質量を$0.15[kg]$、バットの質量を$1[kg]$とする
- バットがボールを打つ地点の高さは$0[m]$とする
- ボールは仰角$30°$で、ピッチャーの方向に飛ぶものとする
- 重力加速度を$9.8[m/s^2]$とする
- 空気抵抗は考慮しない
- $\sqrt{3}=1.732$とする
- 小数第一位を四捨五入して整数値で答えること
ヒント
高校物理の問題です。文系しかいないチームだとかなり厄介ですね。
ボールを打った後の飛距離について求めるわけですから、高校物理ではド定番「放物運動」の問題です。
ただ、打った後のボールについて速度は与えられていませんから、別の方法でボールの速度を求めることにします。
条件をみると、微小な時間でボールに与えた力の大きさが書いてありますから、力積を使います。
また、ボールとバットについての、平面に限定した運動のようすが書いてあります。ここは運動量と力積の関係で、衝突後のボールの速度を求めましょう。
解答
運動量と力積の関係を使う
$[km/h]$を$[m/s]$に変換して計算しました。$÷3.6$をすればいいだけです。どっちでやっても同じことですが……
そして、衝突前・衝突後のバットとボールの速度を整理した図が下です。衝突後のボールの水平方向の速度成分を$v_{水平}[m/s]$とします。
ボール自体は仰角$30°$で飛んでいくので、ボールの速度は水平・鉛直方向に分かれていることを忘れずに。
運動量と力積の関係により
$6×10^3[N]\cdot 1×10^{-3}[s]$
$=(1[kg]\cdot \frac{166}{3.6}[m/s]+0.15[kg]\cdot v_{水平}[m/s])$
$-(1[kg]\cdot \frac{190}{3.6}[m/s]-0.15[kg]\cdot \frac{165}{3.6}[m/s])$
これにより、$v_{水平}=\frac{139}{3.6}[m/s]$となります。
これで衝突後のボールの速度(水平成分)が求められました。あとは、放物運動について考察するだけです。
放物運動では、水平方向には力が働いていないので等速度運動です。鉛直方向については、下向きに重力がはたらくので、等加速度運動です。
放物運動を考察
水平・鉛直方向について式を立てていきます。衝突後のボールの速さを$v$とすると
$v=\frac{v_{水平}}{cos30°}=\frac{139}{1.8\sqrt{3}}[m/s]$
となります。
あと、滞空時間を$t[s]$、求める飛距離を$L[m]$、重力加速度を$9.8[m/s^2]$とすると
水平:$L=vcos30°×t$
鉛直:$0=vsin30°×t-\frac{1}{2}gt^2$
です。鉛直方向の式から、$t=\frac{v}{g}[s]$とわかるので、$L=\frac{\sqrt{3}v^2}{2g}[m]$となります。
そして、いろんな値をこの式に代入します。
$L=\frac{\sqrt{3}}{2\cdot9.8}×(\frac{139}{1.8\sqrt{3}})^2=175.6\cdots\fallingdotseq176$
以上により、求める飛距離は$176[m]$となります。
実際のデータと比較
とんでもない馬鹿力であることは間違いない
飛距離$176[m]$!? 2023年6月30日に行われたDバックス戦で打った特大ホームランの飛距離は$150.3[m]$ですが、これを超える規格外の数字。
問題と同じく、実際のデータについても仰角は$30°$前後です。たまに$19°$とかいう超絶技巧もありますが。
打球速度についても$v=\frac{139}{1.8\sqrt{3}}×3.6\fallingdotseq160.5[km/h]$。まさに弾丸です。
空気抵抗を考えたとしても、ファンが満足する特大アーチになるのは間違いない。
まとめ
いかがだったでしょうか。結構難しいですね……それより計算量が多い! 他にも物理問題があるらしいですが、時間があったら載せますね。