【微分方程式補2】2階線形微分方程式の基礎
投稿:2023/12/18 更新:2024/09/24
こんにちは! でるてぃーです。
今回はいつもの例題を解きまくるやつではありません。2階線形微分方程式に入る前に、これだけは知っておけ!という内容を用意しておいたので見といてください。
以降の回では、この記事の知識を持っている前提でしゃべりますから、是非覚えて帰ってね!
2階線形微分方程式
次の式
$y''+P(x)y'+Q(x)y=R(x)$
を2階線形微分方程式といいます。
$y$は最高2階微分なので2階、左辺は「導関数($y'$や$y''$)+従属関数($y$)」について全て1次式なので線形です。
斉次・非斉次
上の式で$R(x)=0$のとき、つまり
$y''+P(x)y'+Q(x)y=0$
のとき、2階線形斉次微分方程式とよびます。(斉次のほかに同次ともよばれますが、同次形$y'=f(\frac{y}{x})$とカブるので斉次で統一します)
ということは、$R(x)\ne0$の場合は2階線形非斉次微分方程式とよびます。
関数の1次独立
突然ですが2つの関数$u(x),v(x)$を考えます。このとき
「$v(x)=ku(x)$となるような定数$k$が存在しない」$\Rightarrow$$「u(x),v(x)$は$1$次独立である」
が成り立ちます。このようなことをベクトルでやったと思います。関数についても同じように考えてください。ついでに次の表現と同値です。
「$C_1u(x)+C_2v(x)=0$を恒等的にみたす定数$C_1,C_2$は$C_1=C_2=0$のみである」$\Rightarrow$$「u(x),v(x)$は$1$次独立である」$\cdots(#)$
で、さらにこの表現を便利ツールに変えるのが次の行列式です。
$W(u,v)=\begin{vmatrix} u(x) & v(x) \\ u'(x) & v'(x) \end{vmatrix}$
この行列式$W(u,v)$をロンスキアン(ロンスキー行列式)といいます。そして
「$W(u,v)\ne0$」$\Rightarrow$「$u(x),v(x)$は一次独立」
も成り立つんですよ。証明も短いのでやりましょうか。
証明
まず、ロンスキアン$W(u,v)$について
$\begin{vmatrix} u(x) & v(x) \\ u'(x) & v'(x) \end{vmatrix}=u(x)v'(x)-v(x)u'(x)$
ですね。ここで、先ほどちょっと出た
$C_1u(x)+C_2v(x)=0$ $\cdots①$
と、その両辺$x$で微分した式
$C_1u'(x)+C_2v'(x)=0$ $\cdots②$
を使います。$①×v'(x)-②×v(x)$をすると
$C_1(u(x)v'(x)-v(x)u'(x))=0$ $\cdots③$
と整理されますね。ここで$W(u,v)\ne0$っていう条件だったので
$u(x)v'(x)-v(x)u'(x)\ne0$
です。よって$③$式がいつも成り立つためには$C_1=0$であればいいということがわかります。これを$①$式に代入すると
$C_2v(x)=0$
となり、これがいつも成り立つ条件は$C_2=0$となりますね。そういうわけで
$C_1u(x)+C_2v(x)=0$ $\cdots①$
を恒等的にみたす定数$C_1,C_2$の組は$C_1=C_2=0$だけと分かったので、めでたく$u(x),v(x)$は一次独立と示されました。
基本解
斉次形の2階線形微分方程式
$y''+P(x)y'+Q(x)y=0$ $\cdots④$
の2つの解があるとして、これらを$u(x),v(x)$とします。$u(x),v(x)$が一次独立であれば、一般解は
$y=C_1u(x)+C_2v(x)$ $\cdots⑤$
と表せるというものです。これも証明はコンパクトなので載せときますね。
証明
$⑤$式を両辺$x$で一階微分、二階微分します。
$y=C_1u(x)+C_2v(x)$ $\cdots⑤$
$y'=C_1u'(x)+C_2v'(x)$
$y''=C_1u''(x)+C_2v''(x)$
これらを$④$式の左辺にまとめて代入し、右辺を導きましょう。
$(C_1u''(x)+C_2v''(x))+P(x)(C_1u'(x)+C_2v'(x))$
$+Q(x)(C_1u(x)+C_2v(x))$ $\cdots(④の左辺)$
$= C_1(u''(x)+P(x)u'(x)+Q(x)u(x))$
$+C_2(v''(x)+P(x)v'(x)+Q(x)v(x))$
$=0$ $\cdots(④の右辺)$
$u(x),v(x)$は$④$式の解なので
$u''(x)+P(x)u'(x)+Q(x)u(x)=0$
$v''(x)+P(x)v'(x)+Q(x)v(x)=0$
ってことですね。
で、ちゃんと$y=C_1u(x)+C_2v(x)$ $\cdots⑤$には任意定数が2つあります。これは$u(x),v(x)$が一次独立だからなんです。
$u(x),v(x)$が一次従属だと考えてみると
「$C_1u(x)+C_2v(x)=0$」を恒等的にみたす$C_1=C_2=0$以外の$C_1,C_2$の組がある
というわけですよね。それで、試しに$C_1=a,C_2=b(\ne0)$とすれば
$v(x)=-\frac{a}{b}u(x)$
と表せて、$⑤$式に代入すると
$y=(C_1-\frac{a}{b})u(x)=Au(x)$ ($A$は任意定数)
となり、任意定数が1個だけになってしまいます。2階の微分方程式には2個の任意定数があるはずなので、一次従属だとまずいわけです。よって、$u(x),v(x)$が一次独立って条件は結構重要なんですよ。
いろいろありましたが、以上で一般解は$⑤$式で表せるということが示されました。
基本解
新しく言葉を定義します。1次独立である2解$u(x),v(x)$を基本解といいます。
そして、斉次形の2階線形微分方程式
$y''+P(x)y'+Q(x)y=0$ $\cdots④$
の一般解を構成しています。
一般解: $y=C_1u(x)+C_2v(x)$ $\cdots⑤$
非斉次形の解構造
非斉次形の2階線形微分方程式
$y''+P(x)y'+Q(x)y=R(x)$ $\cdots(1)$
および斉次形の2階線形微分方程式
$y''+P(x)y'+Q(x)y=0$ $\cdots(2)$
を用意しました。実は、非斉次形の一般解は
「斉次形の一般解$+$非斉次形の特殊解」
をするだけで求められるんです。つまり
ってことです。何か拍子抜けですが、証明も簡単なのでいろいろ確かめましょうか。
証明
非斉次形の一般解を$y$,特殊解を$y_p$とし、斉次形の一般解を$Y$とします。
$Y$については、2つの基本解(一次独立な解)$y_1,y_2$を用いて$Y=C_1y_1+C_2y_2$と表せますね。
すると非斉次形の一般解$y$は以下のように表されます。
$y=C_1y_1+C_2y_2+y_p=Y+y_p$
この$y$を非斉次形の2階線形微分方程式に代入して
$y''+P(x)y'+Q(x)y=R(x)$ $\cdots(1)$
が成り立てば晴れて非斉次形の一般解であることが示せます。そういうわけで$y$を$(1)$式の左辺に代入し、右辺を導きましょう。
$y''+Py'+Qy(左辺)$
$=(Y+y_p)''+P(Y+y_p)'+Q(Y+y_p)$
$=(Y''+PY'+QY)+(y_p''+Py_p'+Qy_p)$
$=0+R=R(右辺)$
$y=C_1y_1+C_2y_2+y_p=Y+y_p$には任意定数が階数と同じ2個含まれているので、非斉次形
$y''+P(x)y'+Q(x)y=R(x)$ $\cdots(1)$
の一般解であることが確かめられました。
非斉次形の応用
この定理は非斉次形を解くのに必要です。斉次形の一般解$Y$は簡単に求められますが、非斉次形の特殊解$y_p$については
未定係数法,記号的解法,定数変化法
といった解法を身につけて、速く正確に解くことが重要になります。これらの解法はまた後にやりましょう。
まとめ
2階微分方程式の基礎を紹介しました。
次回はその中で一番簡単な「定数係数2階線形斉次微分方程式」をやります。何か聞いただけで難しそうですが、簡単なのでご安心を!
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