【微分方程式補1】完全微分形の証明
投稿:2023/12/13 更新:2024/09/24
こんにちは! でるてぃーです。
今回は完全微分形の記事で説明しきれなかった
$p(x,y)+q(x,y)y'=0$が完全微分形
$\Leftrightarrow p_y(x,y)=q_x(x,y) \cdots①$
の証明を扱っていきます。また、この回は計算問題とかはありません。ただの補足です。
完全微分形の確認
全微分の確認
$df=f_x(x,y)dx+f_y(x,y)dy$
これを$f$の全微分といいましたね。
完全微分形の確認
$2$変数関数$p(x,y),q(x,y)$について
$p(x,y)+q(x,y)y'=0$
という式を考えました。このとき次の条件
$p(x,y)=f_x(x,y) q(x,y)=f_y(x,y)$
をみたすような$f(x,y)$が存在するとき、$p(x,y)+q(x,y)y'=0$を完全微分形とよぶことを学習しました。
ついでに言うと一般解は$f(x,y)=C$ですね。
ただ、さっきの
$p(x,y)=f_x(x,y) q(x,y)=f_y(x,y)$
っていう条件は、まず$f(x,y)$が分かってないとホントに満たされているのかわかりません。
つまり$f(x,y)$が最初から与えられてないと$p(x,y)+q(x,y)y'=0$が完全微分形なのか判別できないということでした。そんなときに次の便利公式
$p(x,y)+q(x,y)y'=0$が完全微分形
$\Leftrightarrow p_y(x,y)=q_x(x,y) \cdots①$
を使うんでした。今回は上の$①$式を証明するだけの回です。
①の証明
「$p(x,y)+q(x,y)y'=0$が完全微分形$\Rightarrow p_y(x,y)=q_x(x,y)$」を示しましょう。
完全微分形ってことは
$p(x,y)=\frac{\partial f(x,y)}{\partial x} q(x,y)=\frac{\partial f(x,y)}{\partial y}$
が成り立つような$f(x,y)$が存在しますよね。ちょっとだけ表現を変えました。ここで
$\frac{\partial p}{\partial y}=\frac{\partial }{\partial y}\cdot \frac{\partial f}{\partial x}=\frac{\partial^2 f}{\partial xy}$
$\frac{\partial q}{\partial x}=\frac{\partial }{\partial x}\cdot \frac{\partial f}{\partial y}=\frac{\partial^2 f}{\partial xy}$
となるので、$\frac{\partial p}{\partial y}=\frac{\partial q}{\partial x}$であり、すなわち$p_y(x,y)=q_x(x,y)$となって示されました。
※ホントは断りなく偏微分の順序を入れ替えるのはよくないですが、問題で与えられる$p(x,y),q(x,y)$は大体連続かつ$1$階偏微分可能ということで許してね。
今度は、「$p_y(x,y)=q_x(x,y)$ $\Rightarrow p(x,y)+q(x,y)y'=0$が完全微分形」を示しましょう。
この条件は「$p_y(x,y)=q_x(x,y)$ $\Rightarrow p(x,y)=\frac{\partial f(x,y)}{\partial x},q(x,y)=\frac{\partial f(x,y)}{\partial y}$が成り立つ$f(x,y)$が存在する」と同じです。なので、そういう$f(x,y)$があったら証明完了ですね。
唐突ですが、$y$だけの関数$g(y)$を用意します。($g(y)$の存在については後で確かめる)このとき
$f(x,y)=\int p(x,y)dx+g(y) \cdots②$
は、ちゃんと$p(x,y)=\frac{\partial f(x,y)}{\partial x}$を満たしています。$f(x,y)$に$x$が含まれてない項$g(y)$があっても、$\frac{dg(y)}{dx}=0$ですからね。
何を示せばいいか
……とりあえず状況整理。上の$f(x,y)$は、$p(x,y)=\frac{\partial f(x,y)}{\partial x}$を満たしているので、もう片方の$q(x,y)=\frac{\partial f(x,y)}{\partial y}$が成り立つことをいえばオッケー。そのために都合のいい$g(y)$を見つけましょう。
$q(x,y)=\frac{\partial f}{\partial y}=\frac{\partial }{\partial y}(\int p(x,y)dx)+g(y))$
$\therefore q(x,y)=\frac{\partial }{\partial y}\int p(x,y)dx+g'(y)$
を得ました。さらに変形して
$g'(y)=q(x,y)-\frac{\partial }{\partial y}\int p(x,y)dx\cdots③$
ですね。
上で$g(y)$は$y$だけの関数と仮定しました。その($y$による)導関数$g'(y)$を積分した結果に$x$の交じった項があっちゃいけないんですよ。
そのための条件は、$g'(y)$が$x$の含まれる項を持たないこと、つまり
$\frac{\partial }{\partial x}g'(y)=0$
になれば万事解決。これが$g(y)$の存在条件です。
さらに$p_y(x,y)=q_x(x,y)$っていう条件を最初に仮定しましたね。これは
$\frac{\partial q(x,y)}{\partial x}-\frac{\partial p(x,y)}{\partial y}=0$
ってことです。以上を踏まえると
$\frac{\partial }{\partial x}g'(y)=\frac{\partial }{\partial x}(q(x,y)-\frac{\partial }{\partial y}\int p(x,y)dx)$
$=\frac{\partial q(x,y)}{\partial x}-\frac{\partial }{\partial x}\cdot \frac{\partial }{\partial y}\int p(x,y)dx$
$=\frac{\partial q(x,y)}{\partial x}-\frac{\partial }{\partial y}\int \frac{\partial p(x,y)}{\partial x}dx$
$=\frac{\partial q(x,y)}{\partial x}-\frac{\partial p(x,y)}{\partial y}=0$
となって、ホントに$g(y)$が存在することが分かります。これより$③$式を$②$式に代入して
$f(x,y)=\int p(x,y)dx$
$+\int (q(x,y)-\frac{\partial }{\partial y}\int p(x,y)dx)dy$
を得ます。最後に
$\frac{\partial f(x,y)}{\partial y}=\frac{\partial }{\partial y}\int p(x,y)dx+q(x,y)$
$-\frac{\partial }{\partial y}\int p(x,y)dx$
$\therefore \frac{\partial f(x,y)}{\partial y}=q(x,y)$
となり、これでようやく証明完了です。長かった……
まとめ
とりあえず証明も終わったので、これで1階線形微分方程式のパターン解法は終わりですね。
次からは2階になります。頑張っていきましょう!
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