【微分方程式⑦】積分因子
投稿:2023/12/11 更新:2024/09/24
こんにちは! でるてぃーです。
前回完全微分形をやりましたね。今回は、判定の結果完全微分形でないときでも
$p(x,y)+q(x,y)y'=0$
を完全微分形にするテクニック、積分因子を取り扱います。
手を動かして、少ない時間で効率よくやっていきましょう。
目次(見出しにジャンプします)
完全微分形の復習
全微分の確認
$2$変数関数$f(x,y)$における$f$の変化量$df$は、$x,y$それぞれの変化量$dx,dy$を用いて、次のように表されます。
$df=f_x(x,y)dx+f_y(x,y)dy$
これを$f$の全微分といいましたね。
完全微分形
$2$変数関数$p(x,y),q(x,y)$について
$p(x,y)+q(x,y)y'=0$
という微分方程式を考えました。これは
$p(x,y)dx+q(x,y)dy=0$
と同じですね。全微分の定義は
$df=f_x(x,y)dx+f_y(x,y)dy$
です。ここで次の条件
$p(x,y)=f_x(x,y) q(x,y)=f_y(x,y)$
をみたすとき
$p(x,y)+q(x,y)y'=0$
を完全微分形とよび、全微分の定義から
$df=0$
となり、一般解は
$f(x,y)=C$
となるんでした。
で、ホントに完全微分形かを判別するための便利ツールが下のような式です。
$p(x,y)+q(x,y)y'=0$が完全微分形
$\Leftrightarrow p_y(x,y)=q_x(x,y)$
この公式を適用したら、完全微分形じゃない場合もあるわけでした。そのような場合はどういう風に解けばいいんでしょうか。
積分因子
完全微分形でない$p(x,y)+q(x,y)y'=0$にある因数$\mu(x,y)$を掛けることを考えます。
$\mu(x,y)p(x,y)+\mu(x,y)q(x,y)y'=0$
この式が完全微分形であるためには
$\frac{\partial \mu(x,y)p(x,y)}{\partial y}=\frac{\partial \mu(x,y)q(x,y)}{\partial x}$
つまり
$\frac{\partial \mu}{\partial y}p+\mu\frac{\partial p}{\partial y}=\frac{\partial \mu}{\partial x}q+\mu\frac{\partial q}{\partial x}$
が成り立てばいいですね。(以降、$\mu(x,y),$$p(x,y),$$q(x,y)$を$\mu,p,q$と表記します)
上のように、完全微分形でない微分方程式$p(x,y)+q(x,y)y'=0$の両辺に掛けて完全微分形にするような因数$\mu$を積分因子といいます。
ここで、具体的な$\mu$を求める方法を3パターン紹介します。
積分因子が$x$のみの関数の場合
$\mu$が$x$のみの関数のときを考えます。$y$で偏微分すると
$\frac{\partial \mu(x)}{\partial y}=0$
となりますよね。さっきの式
$\frac{\partial \mu}{\partial y}p+\mu\frac{\partial p}{\partial y}=\frac{\partial \mu}{\partial x}q+\mu\frac{\partial q}{\partial x}$
に代入すると
$\mu\frac{\partial p}{\partial y}=\frac{\partial \mu}{\partial x}q+\mu\frac{\partial q}{\partial x}$
整理して
$\frac{\partial \mu}{\partial x}=\mu\frac{p_y-q_x}{q}$
となりますね。変数分離形になったので、具体的な$\mu(x)$を求めましょう。
$\int \frac{1}{\mu}du=\int \frac{p_y-q_x}{q}dx$
$log|\mu|=\int \frac{p_y-q_x}{q}dx$
$\therefore \mu(x)=e^{\int \frac{p_y-q_x}{q}dx}$
これにより、例の$p(x,y)+q(x,y)y'=0$を完全微分形にしてくれるような$\mu(x)$を求めることができました。……といって文字だけいじくっても利便性が分かりづらいので、下で必ず例題を見といてね!
積分因子が$y$のみの関数の場合
次は$\mu$が$y$のみの関数の場合です。さっきと同じなので流し読みで結構。$x$で偏微分すると
$\frac{\partial \mu(y)}{\partial x}=0$
となります。さっきの式
$\frac{\partial \mu}{\partial y}p+\mu\frac{\partial p}{\partial y}=\frac{\partial \mu}{\partial x}q+\mu\frac{\partial q}{\partial x}$
に代入すると
$\frac{\partial \mu}{\partial y}p+\mu\frac{\partial p}{\partial y}=\mu\frac{\partial q}{\partial x}$
整理して
$\frac{\partial \mu}{\partial y}=\mu\frac{q_x-p_y}{p}$
となりますね。変数分離形ゆえ具体的な$\mu(y)$が求められます。
$\int \frac{1}{\mu}du=\int \frac{q_x-p_y}{p}dy$
$log|\mu|=\int \frac{q_x-p_y}{p}dy$
$\therefore \mu(y)=e^{\int \frac{q_x-p_y}{p}dy}$
よって、$p(x,y)+q(x,y)y'=0$を完全微分形にしてくれるような$\mu(y)$を求めることができました。繰り返しになりますが、積分因子の使い方にはクセがあるので、絶対下の例題を見ておいてください。
積分因子が$x^my^n$の場合
後で述べますが、積分因子を$x^my^n$にしないとうまくいかないこともあります。使い方は例題をみればわかるのでご安心を。
完全微分形の解法(復習)
完全微分形
$[1]\frac{\partial p(x,y)}{\partial y}=\frac{\partial q(x,y)}{\partial x}$なら完全微分形。もし違ったら積分因子$\mu$を導入。
$[2]f(x,y)=\int p(x,y)dx+g(y)$とおく。
$[3]q(x,y)=\frac{\partial f(x,y)}{\partial y}$を計算し、$\frac{\partial }{\partial y}g(y)=$の形にする。
$[4]\frac{\partial }{\partial y}g(y)=$の式を$y$で積分して$f(x,y)$を求めると、一般解は$f(x,y)=C$
積分因子$\mu$を導入
$[1]$積分因子$\mu$を両辺に掛ける。
$\mu(x,y)p(x,y)+\mu(x,y)q(x,y)y'=0$
$[2]$これが完全微分形になるとき
$\frac{\partial \mu(x,y)p(x,y)}{\partial y}=\frac{\partial \mu(x,y)q(x,y)}{\partial x}$
つまり
$\frac{\partial \mu}{\partial y}p+\mu\frac{\partial p}{\partial y}=\frac{\partial \mu}{\partial x}q+\mu\frac{\partial q}{\partial x}$
である。この式を見て、使うべき積分因子のパターン(3つ)を見極める。
【例題1】
$xsinx+(sinx-xcosx-xy-x)y'=0$ は完全微分形でない.これを簡単に示し,積分因子$\mu$を求めよ.
【例題2】
$3x+2y-xy'=0$ の一般解を求めよ.
【例題3】
$x^2y+(x^3+y^3)y'=0$ の一般解を求めよ.
【例題4】
$y(x+1)+x(y-1)y'=0$ の一般解を求めよ.
復習問題
何も見ずにもう一回やってみよう。
【例題1】
$xsinx+(sinx-xcosx-xy-x)y'=0$ は完全微分形でない.これを簡単に示し,積分因子$\mu$を求めよ.
【例題2】
$3x+2y-xy'=0$ の一般解を求めよ.
【例題3】
$x^2y+(x^3+y^3)y'=0$ の一般解を求めよ.
【例題4】
$y(x+1)+x(y-1)y'=0$ の一般解を求めよ.
まとめ
これで1階微分方程式は終わりです。ということは次から2階微分方程式が始まります。
2階微分方程式は単振動や回路方程式といった高校物理の謎を解き明かす数学的ツールになるので、是非やっておきましょう!
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(補足)2階に入る前に読んでおきたいやつ
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