段位応用計算 第16講 減価償却・定率法

投稿:2025/02/28



こんにちは! でるてぃーです。

今回は第16講、減価償却のうち定率法を扱います。
定額法の復習はお済みでしょうか?

今回はテクニック的な部分も扱っていきたいと思います。

基本単語の復習

前回、いろんな単語が出ましたよね。もう一度おさらいしておきましょうか。

減価償却

1年ごとに、モノの価値を均等に減らしていく計算処理。

また、減価償却することを単純に「償却する」と言うことが多い。

固定資産

簡単に言うと、1年以上使い続けるモノのこと。所有者が「固定」の「資産」ってだけ。

残存簿価1円

固定資産を最後まで償却すると、1円残ること。

『段位応用計算』の実際の問題では、考えなくてよい。

耐用年数

固定資産が完全に償却されるまでにかかる年数。

もっというと、使「用」に「耐」えられる年数ということで、固定資産の寿命などが考慮された値になっている。

取得価額

固定資産を手に入れた時の価値。または、買ったときの金額。

『段位応用計算』では、第1期の首帳簿価額がこれに相当する。

定額法

減価償却のうち、毎年同じ金額ずつ価値を減らしていく計算方法。

固定資産がもつ耐用年数まで、一定の金額ずつ償却していく。最後には残存簿価として1円が残る。

償却額累計

文字通り、ある年度(期)までの償却額の累計。

首帳簿価額

ある年度(期)の償却される前の価値。

言い換えると、1つ前の年度(期)の、年度末の価値と同じ。

償却率

首帳簿価額を償却するときにかけ算される値。

耐用年数によって値が決まっている。

減価償却率表

各耐用年数ごとの償却率が載った早見表。

後述する「定率表」の場合も載っている。


何だっけ?という単語があるかもしれないので、前の記事のリンクを置いときます。

段位応用計算 第15講 減価償却・定額法
モノの価値を計算して評価しよう。

定率法とは

定額法では、毎年一定の額だけ償却していましたね。

「定率」っていうくらいですから、何か割合みたいなやつが一定という気がします。

ということは、毎年一定の額減っていくわけではなさそうです。じゃあどういう風に減るのでしょうか?

定率法の定義

減価償却のうち、初めの年ほど償却額が多く、その後どんどん減少していく計算方法です。

イメージは下の図のようになります。反比例のグラフみたいですね。

早見表を見てみよう

前回も出ましたね。早見表には定率法の償却率も載っています。

この定率法の値は、実は適当に決めているわけではありません。
定額法・定率法ともに、具体的な数式によって計算されています。

定額法の償却率

$償却率=\frac{1}{耐用年数}$

比較のために定額法を取り上げます。
3年で償却しきるためには、取得価額を3等分すればいいだけですよね。

取得価額$100,000$円、耐用年数3年を例にとると

$\frac{1}{3}=0.333\cdots$

を取得価額にかけ算すれば、毎年の償却額が$33,300$円と分かります。
というか、そもそもこの値は

早見表の赤枠の値と同じです。やはり、早見表の値は計算ずくに作られていることが分かります!

法律に左右される定率法

定率法って、実は結構複雑なんですよ。
法律が改正されることで、定率法の償却率はコロコロ変わってきました。

施行日時 適用される方式
~平成19年3月31日 旧定率法
平成19年4月1日~
平成24年3月31日
250%定率法
平成24年4月1日~ 200%定率法

そして、今使われているのは「200%定率法」という方式になっています。

上の早見表は、『段位応用計算』の問題が改正される前のもので、償却率の値は古いものになっています。
なんと、一番古い「旧定率法」の値です。こんな値使ってはいけませんね。

そういうわけで、新しい「200%定率法」での表をここに載せておきましょう。

定率法の償却率

「200%定率法」における償却率は、定額法の償却率の200%、つまり2倍になります。
常に定額法の2倍だから、「定率」というわけですね。数式にしてみると

$定率法償却率=定額法償却率\times 2$

言い換えると

$定率法償却率=\frac{2}{耐用年数}$

になりますね。

具体例:耐用年数3年

上の表を見ると、耐用年数3年の固定資産は、定率法償却率が$0.667$となりますね。
実際に数式に代入してみると

$\frac{2}{3}=0.6666\cdots \fallingdotseq 0.667$

となり、やはり表の値と一致しました。


そういうわけで、定率法の具体的な計算方法についてご説明しましょう!

定率法の計算方法

前回と同じく、$100,000$円で買ったエアコン(耐用年数6年)を例に挙げましょう。

今回は定率法で、耐用年数は6年です。早見表から償却率は$0.333$です。

とはいっても、定額法とほとんど同じ。第2期の償却額を求めてみましょう。

第1期

第1期の償却額は、取得価額$100,000$円に償却率$0.333$をかけ算して得られます。

$100,000 \times 0.333=33,300$

この金額だけ償却するため、第1期末には

$100,000-33,300=66,700$

より、$66,700$円の価値になります。これを次の第2期に持ち越しましょう。

第2期

第2期首帳簿価額は$66,700$円ですね。
定額法だったらもう一回$33,300$円を償却するところですが、今回は違います。

定率法では、毎回償却率をかけ算するので

$66,700 \times 0.333=22,211.1$

ですが、端数が出てきますね。
端数処理の方法は場合によるんですが、『段位応用計算』では切り捨て処理をします。
ということで、第2期の償却額は$22,211$円となります。

これを繰り返していくと次のような表になります。

もっと早い解法がある

上の解法でも十分対応できるのですが、『段位応用計算』には制限時間があるわけです。
早く答えられるもんならさっさと答えたいですよね。

表を作れば、どんな問題にも対応できるかもしれませんが、『段位応用計算』で出題されるパターンは

「首帳簿価額」,「期末償却額」

の2パターンだけです。これに特化した解法を用意しています。

パターン①:首帳簿価額

さっきのエアコンの例でいきましょうか。第3期の首帳簿価額を調べてみましょう。

言葉で説明すると

第2期の償却額は

第2期末償却額$=$第2期首帳簿価額$\times$償却率

で、第3期首帳簿価額は

第3期首帳簿価額$=$第2期首帳簿価額$-$第2期末償却額

です。この2式をまとめると

第3期首帳簿価額$=$第2期首帳簿価額$-$第2期首帳簿価額$\times$償却率
$=$第2期首帳簿価額$\times (1-$償却率$)$

となります。ってことは

1期前の首帳簿価額に、償却率をひっくり返したものをかけ算

すればオッケーです。

数値を当てはめる

第2期首帳簿価額$66,700$、耐用年数6年の定率法償却率$0.333$を代入しましょう。

$66,700\times (1-0.333)$
$66,700\times 0.667$
$=44,488.9$

となることが分かります。

で、超重要なことが1点。それは

端数は切り上げる

ということです。
え!?さっき『段位応用計算』は端数切り捨てだって言ったでしょとお思いだと思います。
そこらへんのカラクリを説明しておく必要がありますね。

この解法で切り上げが必要な理由

基本となる表の解法で

最初の、地道に表を作って求める方針に戻ります。

第2期末償却額は、第2期首帳簿価額に償却率をかけ算したものでしたね。

$66,700 \times 0.333=22,211.1$

ですから、第3期首帳簿価額は

$66,700-22,211.1=44,488.9$

となり、早い解法と同じ。
でも表の解法では、償却額は切り捨てるんでした。つまり第2期末償却額は$22,211$円。

これにより第3期首帳簿価額は$44,489$円です。

早い解法で

一方、早い解法の第3期首帳簿価額$44,488.9$円の端数を切り捨ててしまうと大変です。
$44,488$円となり、1円のずれが生じてしまいますからね。

そこで、表形式できっちり計算した結果と合わせるために、早い解法では便宜的に端数を切り上げ、つじつまを合わせていたということです。


くどいですが、この「切り上げ」という調整は、償却額の端数を必ず捨てているために生まれたものだ、という解釈が大事です。
よく分からずに指導している方もいるようなので注意が必要ですね。

何がともあれ、以上で早い解法からも第3期首帳簿価額が$44,489$円であることを確かめることができました!

パターン②:期末償却額

期末償却額は大したことありません。パターン①:首帳簿価額の延長上でしかないですから。

ここでは第3期末償却額を求めてみましょう。

とは言いつつ、やることは簡単です。
第3期首帳簿価額に償却率を掛けて、端数を切り捨てて終了ですね。

第3期末償却額$=$第3期首帳簿価額$\times$償却率

に、具体的数値を入れてみましょう。

$44,489\times 0.333=14,814.8\cdots$
$\fallingdotseq 14,814$

これで第3期末償却額が計算できました。あっさりでしたね。

試験での対応

共通することは、取得価額→第2期→第3期→と順番に求めるという点。

パターン①:第n期首帳簿価額

第$n$期首帳簿価額$=$第$(n-1)$期首帳簿価額$\times (1-$償却率$)$

端数が出たときは切り上げ。

パターン②:第n期末償却額

第$n$期末償却額$=$第$n$期首帳簿価額$-$償却率

端数が出たときは切り捨て。

実際の問題には早見表の値が載っている。

練習問題①:首帳簿価額

【問題①】

取得価額¥926,000,耐用年数11年の固定資産を定率法により減価償却すれば,第3期首帳簿価額はいくらですか。ただし,決算は年1回,残存簿価は¥1とする。
(毎期償却限度額の円未満切り捨て)

【解答】

さっきの減価償却率表の値を読み取りましょう。今回読み取る部分は耐用年数$11$年、定率法償却率$0.182$です。

まずは第2期首帳簿価額を求めたいですね。償却率をひっくり返しましょう。

$1-($償却率$)=1-0.182=0.818$

これを取得価額にかけ算して求めます。まだ端数は出てきません。

$926,000\times 0.818=757,468$

次に第3期首帳簿価額を求めます。第2期首帳簿価額$757,468$円を使って、同様に計算しましょう。
首帳簿価額を求めるので、端数は切り上げですよ!

$757,468\times 0.818=619,608.8\cdots$
$\fallingdotseq 619,609$

以上より、第3期首帳簿価額は¥619,609となります。

練習問題②:期末償却額

【問題②】

取得価額¥298,000,耐用年数9年の固定資産を定率法により減価償却すれば,第3期末償却額はいくらですか。ただし,決算は年1回,残存簿価は¥1とする。
(毎期償却限度額の円未満切り捨て)

【解答】

さっきの減価償却率表の値を読み取りましょう。今回読み取る部分は耐用年数$9$年、定率法償却率$0.222$です。

まずは第2期首帳簿価額を求めたいですね。償却率をひっくり返しましょう。

$1-($償却率$)=1-0.222=0.778$

これを取得価額にかけ算して求めます。まだ端数は出てきません。

$298,000\times 0.778=231,844$

次に第3期首帳簿価額を求めます。第2期首帳簿価額$231,844$円を使って、同様に計算しましょう。

首帳簿価額を求めるので、端数切り上げですね。

$231,844\times 0.778=180,374.6\cdots$
$\fallingdotseq 180,375$

さらに、第3期末償却額を計算します。
今度は、ただの償却率$0.222$を第3期首帳簿価額にかけ算します。償却額の計算なので、切り捨て!

$180,375\times 0.222=40,043.2\cdots$
$\fallingdotseq 40,043$

以上より、第3期末償却額は¥40,043となります。


まとめ

切り上げだったり切り捨てだったりややこしかったですね。ゆっくり理解してもらえたら結構です。

次は「複利年金現価」をやります。

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でるてぃーメモ 管理人

大学2年。趣味はそろばんと資格勉強。個別指導塾とHP更新のバイトをしています。


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