「読み上げ算」上達の技術

選手向けの話になってくるかと思います。
技術面やメンタル面でもコツがあります。

  • 「読み上げ暗算」のコツも書きたかったのですが,自分が下手くそなのでやめときます。

大会初心者向けのコツ

いろいろな桁数・桁幅に触れておく

5桁~8桁,5桁~9桁,7桁~9桁,7桁~10桁,7桁~11桁,……というふうにいろんな組み合わせに慣れましょう。
最初のうちは,「百万」「一億」「千万」「十億」と言われても,自分のそろばんのどこの位が対応するのかまだ難しいです。

いろんな桁幅に挑戦して,「百万」ならこの位置か,「千万」はここで……という感覚を身につけます。

間違えてもやめない

先生が読み上げている途中,間違えた桁数を足したり,速さについていけないことがあると思います。
そういった場合でもやめずに,次に読まれた数を足していきましょう。

  • 読んでいる最中にワンタッチそろばんのご破算ボタンを押すのはやめましょう。変な物音を立ててはいけません。成長しないばかりか,みんなに嫌われます。

たまに大会っぽくやる

大会みたいに答案用紙に書き込んで,最後に交換・採点するという練習です。
初めて大会に出た時,解答するルールに戸惑います。
1問ずつ読んでいき,読み終わったら15秒以内に解答し,続けざまにまた読んで……を繰り返す練習がしたいですね。

入賞レベルへのコツ

どの位がもう出てこないか先読み

読み上げられる問題ですが,読む数の桁がうまくばらつくように設定されています。
例えば7桁~11桁を10個読み上げる問題があったとき,実は10桁が8回読まれるみたいなことは絶対にありません。
そして,同じ桁が連続することもありません。8桁を読んだら次は8桁以外のどれかです。

7桁~11桁の桁幅は5です。読まれる数が10個なら,均等に2個ずつ割り振られるはずです。
7桁~16桁なら,桁幅は9。この9個の桁のうちひとつの桁が2個読み上げられるということです。

つまり,読み上げの最中に,既に読まれた桁を意識して,次に読まれうる桁の準備をすることが重要。

「7桁~11桁で,8個めの数。既に百万と十億の位は尽きたから,次の数は千万か一億か百億,どれだ?」

こういう暗黙知がない,初めて入賞争いに参加した選手は大体常連に負けてしまいます。
このことをまず覚えておいてください。

簡単な問題を左手で

そろばん塾の先生は,初心者向けに簡単な桁数・速度の問題をしますが,それを利用します。
出来る人は左手でやってみてください。

本当に速い問題では,右手だけでなく左手も駆使してついていきます。
左手を慣らしてみることをおすすめします。

時間差を意図的に作ってワーキングメモリ対策

ふつうは,先生が読み上げた瞬間に置いてかれまいと計算を始めると思います。
しかし,大会入賞ラインくらい速い場合は,自分が一の位のあたりでもたもたしている間に次の数が読まれることがあります。
あるいは,自分が間違った数を足したときのリカバリーに時間がかかって置いてかれることもあります。

ただし,置いてかれても読み上げられた最初のあたりの数を一瞬だけ覚えておけば,命がつながることも多いです。
この,置いてかれてもなお追いつくワザを身につけるためには,わざと「置いてかれる」環境を作るのが重要。
つまり,先生が読み上げて1秒たった後に足します。

簡単な問題なら,1秒たったときに上位3桁くらいの遅れが生じると思います。
これをすぐに暗記します。そして追いつきます。

難しい言葉でいうと,脳の「ワーキングメモリ」を拡張させるのです。
1秒に慣れたら1.5秒にしてみたりいろいろ工夫します。

遅れを取り戻す技術を身につけると,大会当日にここ一番の力が発揮できるはずです。

決まり字ならぬ「決まり桁」対策

7桁~16桁のような大きな桁幅の問題を正解するにはコツがいります。
読み手が数を読み始めるときに,「百…」と言ったら「百万」「百億」「百兆」の3つの可能性があります。
「千…」の場合も,「千万」「千億」「千兆」の可能性が出てきます。
「十…」なら「十億」と「十兆」の2択なのでまだ楽です。しかも端っこの桁でもないので。

そうすると,「百万」「百億」「百兆」しかない問題や,「千万」「千億」「千兆」しかない問題をやるといい練習になります。
これら6個が含まれているとより実践的ですね。

もちろん,既に出た位を意識して先読みするというさっき言ったテクニックも備えれば,ものすごく読み上げが強くなります。

読み手の呼吸やクセを知っておく

最後に読み上げる数になると,少しずつ読むスピードが遅くなったりする読み手もいます。
ある数を読み上げた後,百万や千万くらいは息継ぎせずそのまま読む人もいます。

このように,読み手のクセを知っておくと,それだけ大きなアドバンテージになることもあります。

特に,読み手は速さを重視しようとして,小さい桁はブレスなしに読むという情報を持っていたら強いです。
なぜなら,「百…」と聞いた時に「百万」「百億」「百兆」の可能性が「百万」1つに絞られるからです。
とは言いつつ,絶対そうとは限らないのでこういう情報は鵜吞みにせず可能性が高いとだけ意識を持っておきたいところです。

優勝をねらう技術

引けなくなる問題対策

決勝問題のあたりになってくると,なんの予告もなく途中で引けなくなる問題が出てくることがあります。
レベルの高い大会ではたまにあります。
加減算の問題が来たら,その可能性を常にもっていてください。

やり方としては2級以上の見取算に現れる補数(マイナス)の処理と同じです。
ただし,読まれている最中にマイナスの状態から元に戻ることもあります。
そうなったとき,借りた最上位の位の1珠を直ちに取り払います。

マイナスの問題が出題されると,対策していない選手は全て門前払い。差をつけたいですね。

9爆弾対策

たまに発生するのですが,連続する位が9になっている状態があります。
これを自分では「9爆弾」と呼んでいます。

これの何が爆弾なのかというと,右端の9に1が足されたとき,繰り上がって左へ左へと9を処理しないといけません。
当たり前ですが,「9」は,5珠と1珠が最大限足された状態。「0」にするのが一番めんどくさい数です。
しかも凶悪なのが,僕たちは右へ右へ追いついていかないといけないのに,左へ左へ進む操作を強いられるという点です。

このトラップで,もはや挽回不可能なレベルまで読み手に引き離される場合もありますね。
この対策はした方がいいと思います。そのうち専用の問題を作ろうかと思います。

読み終わりの目線を一兆へ

1個の数が読み終わったとき,すぐに最上位の位に戻りますよね。
大きな場合は千兆の位が読まれたりします。かといって百万の位かもしれません。

目線を百万のあたりにすると,百兆や千兆の数が読まれたときに大変なことが起こります。
どこが百兆か千兆か目で追うという無駄な0.5秒が発生します。
そうならないように,あらかじめ読み終わりの時に目線を左端へ移しましょう。

かといって,千兆に目線を固定すると,ちょっと遠い百万のあたりが読まれたときに結局目で追うことになります。
大きい桁・小さい桁のどちらでも対応できるよう,目線は千億から十兆の間くらいをおすすめします。

「読み上げ算」入賞へのメンタル

強い人にあたっても冷静に

ただでさえ緊張する会場で,冷静になれれば誰も苦労しないのは分かってます。
強い人は何回も大会で読み上げ算種目をやってきて,王者の風格をもっています。
周りからはそういうオーラを放つように見えますし,なんなら強い人本人も入賞に慣れていてあんまり緊張しません。

最初のうちは,「多分負けるけど,運良く勝ったらいいな」くらいの心づもりで臨んでください。
「絶対勝ってやる」という感じで変に背伸びするといつもの調子が崩れます。

  • 受験勉強や社会に出て去年はいなかった強い人が,今年の参加名簿に入っているとそろばん塾の先生やそろばんの部活の顧問がとりあえず警戒します。

読み手が別のそろばん塾の先生でも慌てない

正直,その読み手の塾の生徒が強いです。
読み手としてのクセを最も知っているうえ,いつも聞き慣れた声で本番に臨めるからです。
だからといって,急に読み手が変わるかもしれません。
いつホームがアウェイになってもいいように,最初から知らない人が読み手をやるというような感じでやってもらえればと思います。



読み手に引き離されるという感覚,途中でもたついてパニックになる感覚,これこそが本当の醍醐味です。
そんな状況下でどう命をつなげるか,どう遅れを取り戻すか。0.1秒単位のリカバリー能力が試されます。